立地企業インタビュー

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トップページ立地企業インタビュー第一稀元素化学工業株式会社

第一稀元素化学工業株式会社(江津工場)

第一稀元素化学工業株式会社江津工場前川幸彦工場長江津工場 前川 幸彦 工場長

大阪府大阪市に本社を構え、ジルコニウム化合物の製造メーカーとして世界規模で圧倒的なシェアを誇る第一稀元素化学工業株式会社。
1996年、島根県江津市に江津工場を設立され、以降地元人材の積極採用を推し進めるなど、地域と共に前進し続けてこられました。

同社は2004年12月に東証2部へ上場。事業収益を社員に還元すると共に人材育成にも力を注がれ、社員を大切にされている企業です。
今回は江津工場の前川工場長に、島根県に立地された経緯や、人材育成に関する取組みなどについて伺いました。

1.主な事業内容や製品についてお聞かせください。

暮らしに欠かせないジルコニウム化合物の製造メーカー

ジルコニウム様々な製品に活用されるジルコニウム

当社の主な事業内容は無機化学工業製品の製造です。特に創業以来、ジルコニウム化合物に特化し、その可能性を追求し続けてきました。

おそらく「ジルコニウム」と聞かれて、どこにどのように使われているかすぐにピンとくる方は少ないのではないかと思いますが、実はジルコニウムは地球上で20番目に多い元素で、皆さんよくご存知の10円玉の成分である銅の倍以上地球上に存在しています。

ジルコニウム化合物には非常に優れた特性があります。例えば自動車の排気ガス中の有害物質を浄化する触媒や燃費改善に大切な役割を担う酸素センサーにも使われていて、環境技術分野でジルコニウムが役立っています。

このほか多種多様な特性を活かした用途に活用されていまして、ジルコニウムは今や私たちの生活で欠かせないものとなっています。需要は国内だけに留まらず世界中にありますので、当社製品は海外へも多く輸出されています。

2.国内外に数ある拠点の中での江津工場の位置づけは?

主力製品である排ガス浄化触媒原料の生産拠点として

ジルコニウムジルコニウムが原料の自動車排ガス浄化触媒

当社が製造しているのは自動車部品そのものというわけではなく、部品に不可欠な酸化ジルコニウム、見た目は粉末状のものですが、それを製造しています。

この粉末が排ガス浄化装置に使われることで、有害物質を効果的に無害化することができる仕組みになっていて、ジルコニウムは目に見えないところで地球環境を守っているのです。

江津工場では、この触媒原料生産の主力工場として全世界に製品を供給しております。

3.島根県に進出された経緯についてお聞かせください。

BCP対策と豊富な水資源のため

江津地域拠点工業団地江津工場がある江津地域拠点工業団地

皆さんご記憶にあると思いますが、1995年に阪神淡路大震災がありました。当時、当社は本社のある大阪市住之江区の工場1か所で操業しておりました。大きな被害はなかったものの少なからず影響を受けました。お客様への製品納入に大きなリスクを感じたのが進出のきっかけです。

災害リスクを低減するBCP対策と、島根には江の川という大きな河川があるので、化学事業を営む当社にとって重要な水資源が豊富であったことが島根に進出を決めた理由です。

4.島根県に立地されて良かったと思われる点をお聞かせください。

手厚い行政のバックアップに助けられている

工場内の様子工場内の様子

工場操業当時から島根県、江津市などから手厚い行政支援をいただきまして、増設などの際にはあらゆる面でよく相談に乗っていただきました。

最近では人材の確保にも積極的に協力していただいております。
地元の高校生との対話の機会を作っていただき、当社が目指していた“地域に根差した工場作り”へのバックアップをしていただいていると感じています。

5.逆に島根県での立地のデメリットと感じられていることをお聞かせください。

大きなデメリットは感じていない

交通網イメージ更なる交通網の発達に期待

大阪地区と比較すると、操業当初は停電(瞬時電圧低下)が多かったので、オートメーション化された工場での復旧作業や品質の維持に苦労しておりました。 しかし、現在はそれもほとんどなくなり、特に大きなデメリットは感じていません。

強いて言えば、利便性でしょうか。どうしても「遠い」という印象をお客様から持たれてしまいがちなのが残念です。
今後、交通の便や利便性がもっと良くなり、更に島根県が発展することを強く希望します。

製品の出荷に目を向けても輸出比率が高くなっていますので、浜田港をもっと発展させて、関西圏の港に依存しなくなるといいですね。

6.採用にあたって、御社の求める人物像についてお聞かせください。

“出来る人”より“強い人”を求めている

人としての芯の強さが大切

会社に入るといろいろな困難に直面します。そんな時に必要な能力として、円満な人間関係を築ける力やコミュニケーション力、業務課題や新規事業への取り組み姿勢、会社の方向性への理解など、人としての成長と強さが大切と考えます。
単に業務遂行ができる、ということはあまり重視していません。

礼儀作法などは当然のことですが、さらに会社の一員としての自覚を持ち、自分が将来どうなりたいかを描くことができて、粘り強く取り組むことが出来る人物を求めています。

「将来社長になりたい」と話す若手の社員もいましてね。そういう熱意は大変喜ばしいことです。社員の皆さんのキャリア形成における選択肢はできるだけ増やしてあげたいと思っています。

また、会社内の能力(インハウススキル)だけでなく、社会や地域の一員としても貢献できる能力(ポータブルスキル)を持つ人材がより理想的ですね。
そんな人材が、当社のより良い製品を生み出す原動力になると考えています。

7.人材育成に関する考え方や取組についてお聞かせください。

従業員とその家族を大切に

USJ家族パーティーの様子家族ぐるみで和気藹々と交流(USJにて)

給与面では、この度改正した新人事制度のもと、成果だけに捉われない評価、処遇を行っています。それは、少しでも自分の成長につなげてほしいという思いがあり、モチベーション高く日々の業務に取り組んでもらうことがこれからの企業の成長につながると考えるからです。

福利厚生面では、家族ぐるみで参加できるイベントを開催しています。
5年に一度のペースで大規模なイベントを開催していて、これまでに海外旅行や、日本丸での一日クルーズ、USJでのパーティー開催など、従業員だけでなく家族も参加して楽しめる企画を行うことで、親睦を深めています。
従業員とその家族を大切にする社風は、創業者から受け継がれたものです。

全社のクラブ活動も盛んで、仕事以外の場所での仲間との交流を深めたり、地域の方々との交流にも役立っています。
野球、釣り、テニス、フットサル、ボーリング、囲碁将棋など、様々な活動がありますよ。
江津工場は野球部が頑張っています。また、各個人の趣味や地域行事への参画にも積極的に支援する拠点です。

人材確保面では、有難いことに様々な方面より企業説明会などのお誘いを受けています。このような場では、我々の想いを工場従業員が直接生徒さんや先生方に伝える取り組みを行っています。

従業員の自発的な成長を促す「らくらく活動」

らくらく発表会の様子優れた取組みには社長表彰も

新入社員は、入社後は新人サポーター制度によって、1年間担当する先輩の仕事を直接学びながら相談できるため、仕事の基本を集中的に習得することができます。

さらに、資格取得報奨金制度により自己啓発に取り組みやすい環境を作っています。

また、全従業員が参加する小集団活動”らくらく活動”という職場改善活動を通じて、問題解決力やコミュニケーション力を養います。

”らくらく活動”では、任意の少人数のグループを結成して、職場のあらゆる課題(例えば生産効率の向上であったり、安全確保のための取り組み)を自分たちで見つけてそれに対する改善策を実現する(らくにする)活動を行っています。

年に一度発表会があり、人前で話をする訓練の場にもなっています。発表の形式も自由なので、寸劇やショートコントのようなスタイルで発表するグループもあって楽しい雰囲気でやっています。優良な改善活動を行ったグループは表彰されますので、みんな意欲的に活動していますよ。

“人の成長なくして会社の成長は無い”という観点での人材育成の取り組みです。

8.島根県の人材の特徴として感じられていることはありますか。

基本的に真面目

働く社員の様子真面目で前向きな島根の人材

非常に真面目に仕事に取り組んでくれています。トラブルなど困難に直面しても「自分たちで何とかしよう」という前向きな姿勢がある一方で、近年の若い社員は少し控えめと言いますか、もう少し自分の意見を発信したり、得意分野を深く追及する意欲が少ないように感じます。

前後の業務とのつながりや、他工場との連携等インフォーマルな活動を積極的に出来るようになって欲しいと思います。

9.今後の事業展望についてお聞かせください。

お客様へ安定した製品供給ができる体制を整備

ジルコニウムイメージジルコニウムの可能性は無限大

当社も海外展開や他の事業展開を積極的に進めていますが、これからも物づくりの重要拠点として、江津工場の位置付けは重要です。工場拡張も視野に入れ、安定したお客様への供給体制を整えていきたいと考えています。

当社の強みとして、お客様のニーズに柔軟に対応できる研究開発力があります。そうすることで、着実にお客様との良い信頼関係を積み重ねているものと自負しています。

ジルコニウムという素材は日頃直接目にする機会は少ないものの、現在の私たちの暮らしを影で支え、今後も絶えず変化していく世の中で確実に必要とされる素材です。
今後も研究開発のためのたゆまぬ努力を重ねつつ、ジルコニウムで世の中を豊かにし続けることが我々の使命であると感じています。

10.島根県民や他の事業者へメッセージなどあればお聞かせください。

地元島根により貢献できる企業に

第一稀元素科学工業株式会社江津工場長前川幸彦工場長前川工場長「これからも地域に根ざした工場でありたい」

私も大阪から島根に移り住んで20年以上過ぎました。
とても暖かく迎え入れていただき、当社の成長の原動力としても島根県の皆様の力が大きかったと感じておりまして、大変感謝しています。

当初の目的である“地域に根差した工場”も、現在では工場従業員全員が島根県民となりましたので、一応の目的が達成されたと思います。
今後は地域貢献にも力を入れ、更なる飛躍に向けて皆様とともに成長していきたいと思います。

会社の基本情報およびお問い合わせ先

江津工場外観

会社名:
第一稀元素化学工業株式会社 江津工場
所在地:
〒699-2837 島根県江津市松川町上河戸400-4
連絡先:
TEL:0855-55-1731
FAX:0855-55-1780
URL :
http://www.dkkk.co.jp/

(平成29年取材)

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