立地企業インタビュー
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トップページ立地企業インタビューDMG MORIキャステック株式会社
DMG MORIキャステック株式会社
社長執行役員 高井康文氏
大正12年、出雲地方の中心地である斐伊川のほとりで創業して以来、高品質な鋳物製品の生産により発展し続けてきた株式会社渡部製鋼所。2023年に創業100年を迎えたと同時に社名をDMG MORIキャステック株式会社へと変更し、新たな歴史の1ページをスタートさせました。
世界の工作機械業界のトップランナーであり続けるDMG森精機株式会社のグループ会社である同社は、島根県出雲市大津町に本社鋳造工場を、雲南市木次町に組立工場を構え、ワンストップで鋳物製品の製造を行っています。同社社長執行役員の高井康文氏に、島根県への立地の経緯や今後の事業展開などについてお聞きしました。
1. 御社の事業内容についてお聞かせください。
観光地で見られる景観製品の製造も手掛ける
主な製品は、親会社であるDMG森精機の製造する大型工作機械の土台となる「ベッド」「コラム」と呼ばれる鋳物部品になります。
工作機械とは、別名マザーマシンとも呼ばれ、世界中のあらゆる工業製品を生み出す源となるものです。現在、本社鋳造工場は最大重量が15トンの大物鋳造部品を木型による鋳造やフルモールド鋳造で生産を行っています。ここまでの大きさのものは山陰地方では最大級の規模になります。
木次工場では組立に高い技術力が求められる「立形マシニングセンタ」等の製品の組立を行っています。
また、大型工作機械のほかにも、雲南市・加茂岩倉遺跡に設置されている銅鐸型の車止め、大田市・菜洗橋にかかる高欄パネルなどの景観製品も企画製造し、島根の街並みを彩っています。
2. グループ全体における島根拠点の位置づけとその効果についてお聞かせください。
一大サプライチェーン形成の要となった木次工場
2020年に雲南市の木次工場を一新し、これまで世界最大の工作機械の生産拠点であるDMG森精機伊賀事業所で組立を行っていた立形マシニングセンタの組立を移管することで、出雲工場で製造した鋳物部品を松江市内にある株式会社松江山本金属さんで加工したのち、木次工場で組み立て、全世界へ向けて出荷するという島根県内でサプライチェーンを形成するに至りました。
これにより出雲工場で生産した鋳物を片道500Km近い距離を輸送し伊賀工場で加工を行った後、木次工場へ戻し組立を行っていましたが、輸送距離が大幅に短縮され、輸送にかかる時間とコストを劇的に減らすと同時に、輸送時に排出されるCO2の削減にも貢献しています。
鋳物部品は高い品質の維持と安定供給が重要です。山陰エリアのパートナー企業様との連携もあり、スピーディーかつ安定的な供給が実現できているのも弊社の大きな強みとなっています。
3. 島根県で事業拡大されて良かったと思われる点をお聞かせください。
今後も支援制度を活用して事業拡大を目指す
島根県は行政の支援制度が充実していると感じています。特に県内での工場増設に対して繰り返し補助制度を活用できる点が大きなメリットです。敷地内には築60年を超える古い建屋もまだ残っており、これらを整備していくうえで引き続き大規模投資が必要ですので、行政から手厚く支援していただけるのはとてもありがたいことです。
4. 逆に島根県のデメリットと感じられていることをお聞かせください。
理工学系の人材を育成する学校や学部に期待
強いて言えば、理工学系の大学や研究機関が少ない点でしょうか。
その点、この度島根大学に新たに創設された「材料エネルギー学部」には金属系の学科があるとのことで、期待しています。
弊社としても、最近では松江工業高等専門学校で実施されている課題型授業に企業として参加させていただくなど連携を強化しており、学生に鋳造業界の魅力を知っていただく機会の創出に努めています。
5. 採用にあたって、御社の求める人物像についてお聞かせください。
「成長意欲が感じられる人を求めている」と高井社長
今後は製造における解析業務などにも力を入れていきたいので、数字に強く、論理的思考力に長けたIT人材の採用も強化したい考えです。
地元人材はもちろんのこと、都市部で研鑽を積み、キャリア転職を目指す方のUIターン転職先の選択肢としても当社を選んでいただけるよう、今後も採用戦略に力を入れていきます。
6. 島根県の人材の特徴として感じられていることはありますか。
コツコツ実直に成果を積み上げていくのも島根県民の良さ
日々社員と接している中でも、特に感じるのが「真面目で、きっちり仕事をこなそうとしてくれているのがよく伝わってくる」ことです。よく「島根県の方々はシャイだ」とも言われますが、多少おとなしい部分はあるものの、真摯に仕事に取り組む勤勉さをひしひしと感じています。
7. 人材育成に関する考え方や取り組みについてお聞かせください。また、人材確保にあたって、配慮・工夫されている点はどういったことですか。
事業拡大と共に採用力の強化を図る
鋳造の仕事については、「鋳造技能士(鋳鉄鋳物鋳造作業)」という国家資格があり、資格取得を会社全体として奨励しています。弊社には熟練の職人が多く在籍していますので、サポート体制は万全です。
また、特定の領域のプロフェッショナルだけでなく、多能工を育成したいという思いもありますので、自身のスキルの幅を広げていきたいと考える人には積極的に学びと成長の機会を提供します。
また、採用活動にもより力を入れていきますので、各種媒体を活用しながら県内・県外に向けての情報発信を強化していきたいと考えています。
8. 福利厚生などへの取り組みの内容や考え方についてお聞かせください。
社員食堂では手作りの温かい食事が大好評
まずは給与水準を引き上げていきたいと考えています。これはどこの企業でも課題だと思うのですが、頑張ってくれている社員のためにも、できる限り高い給与水準を目指したいですね。また、よりよい職場環境作りにも力を入れており、社屋建て替えのタイミングで社員食堂の充実を図りました。これが大変好評で、ランチタイムを楽しみにしている社員も多いです。
また、「よく遊び・よく学び・よく働く」という考え方に基づき、有給休暇の100%取得も奨励しています。今年度については、現時点で90%以上の有休消化率を実現しています。
9. 地域貢献活動(祭り・イベント等)の内容や方針など取り組み状況をお聞かせください。
地域環境に配慮し工場周辺の整備を実施
鋳造という業種上、どうしても騒音が発生したり、大型車両が頻繁に出入りしたりする場面が避けがたく、周辺地域の住民の皆さまにご理解とご協力をいただく必要があります。我々が事業を継続していくために必要なことですので、工場の改修時には工場周辺の美化も含めて取り組んで行きたいと思っています。
これまで実施した活動としては、幹線用水路の清掃作業や安全防護柵の設置、照明灯の設置などがあります。また、地区の神社の祭りへの協賛なども行っています。
地域に愛される企業を目指して、今後も引き続き活動を継続してまいります。
10. 今後の事業展開、展望についてお聞かせください
クリーンな鋳物の生産と安定した製品供給を実現していく
まずは敷地内に残る古い建屋や設備の更新を進めることで、生産能力拡大と生産性向上を図ります。リーマンショック以降、国内の鋳造メーカーの数は大幅に減少しましたが、一方で労働人口の減少に伴う工場省人化などの影響を受けて、工作機械の需要は変わらず存在し続けるため、機械の土台となる鋳物製品の安定供給が我々の責務です。
また、環境への配慮も我々に課された重要な課題であり、真摯に取り組んでいます。先述のサプライチェーン形成による輸送距離の短縮や電気炉の導入によるCO2排出量削減のほか、寿命を全うして廃棄される工作機械の鋳物を原材料として再利用、工場への太陽光発電システム導入など、近い将来限りなくCO2排出量をゼロに近づけるための施策を積極的に推進しています。
11. 島根県民やほかの事業者へメッセージなどがあればお聞かせください。
出雲発の「鐵」を全国に向けてPRしたい
出雲地方は古代からタタラによる鐵の生産地として栄えてきました。私たちはその歴史を感じ「品質と技術こそが最も重要」との考えで優れた製品作りに魂を注いできました。
鋳物産業の生産量において島根県は全国でもトップレベルであり、県の基幹産業の一角を担っていますので、その事実をより広くPRしていけたらと強く願っています。
会社の基本情報およびお問い合わせ先
- 会社名:
- DMG MORI キャステック株式会社
- (本社工場)
- 所在地:
- 〒693-0011 島根県出雲市大津町1378
- 連絡先:
- TEL:0853-21-3344
FAX:0853-21-3349 - (木次工場)
- 所在地:
- 〒699-1312 島根県雲南市木次町山方231-22
- 連絡先:
- TEL:0854-42-3388
FAX:0854-42-1232
(2024年11月取材)