立地企業インタビュー
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島根イーグル株式会社
代表取締役社長 高瀬 一明 氏
自動車用精密部品である「リップシール」の製造において、世界で90%以上という圧倒的なシェアを誇る島根イーグル株式会社。
精密部品のトップメーカーであるイーグル工業株式会社の生産拠点として、1990年に島根県雲南市に同社を設立され、2020年には創業30周年を迎えられます。
今回は代表取締役の高瀬一明社長、執行役員の川上業務部長のお二人に、島根県への立地のメリットと感じられていることや、地域との融和を図るための取り組みなどについて、お話を伺いました。
1.主な事業内容や製品についてお聞かせください。
世界中の自動車で使われているリップシール
(斜線部分で使われている)
精密部品のトップメーカーであるイーグル工業株式会社の生産拠点として、主にカーエアコン用リップシールや、各種制御弁の製造を行っています。
リップシールと聞かれても、一般の方にはどんなものか想像がつきにくいかもしれませんね。実は世界に流通しているほとんどすべての自動車に、1台につき1個のリップシールが使われているんですよ。
簡単にご説明すると、リップシールはカーエアコン用コンプレッサに使われるもので、リップ先端と軸表面との接触部で、冷凍機油とフロンガスを密封するものです。小さな部品ですが、自動車のエアコンになくてはならないものです。
2.イーグル工業グループの中での貴社の位置づけは?
小さな部品だが車には欠かせないもの
親会社であるイーグル工業株式会社は、自動車・建設機械業界向け、一般産業機械業界向け、舶用業界向け、航空宇宙業界向けの、4つの事業セグメントごとの製品の製造・販売を行っています。
島根イーグル株式会社は、主力製品である自動車業界向け事業のリップシール、制御弁のマザー工場としての位置付けとなっていて、売上はイーグル工業全体の売上の約15%を占めています。
国内だけでなくアジア・ヨーロッパなど海外のお客様へも製品を供給していますので、海外関連会社(メキシコ・フランス・タイなど)への生産立ち上げ支援や品質管理の指導も行っています。
3.島根県に進出された経緯についてお聞かせください。
同社社屋・工場のある雲南市掛合町
当社設立前の生産拠点の一つとして、岡山事業場がありまして、そこでリップシールを生産していたのですが、生産量の増加により手狭になってきたので、新会社を設立することになりました。
そこで地方拠点の候補地としてあがったのが島根県です。物流面から岡山とあまり離れていないこと、土地価格が安いことなどを条件に県内数箇所を調査した中で、最も熱心にアプローチがあった雲南市掛合町での立地を決定しました。
4.実際に島根県に立地されて良かったと思われる点をお聞かせください。
QCサークル表彰
島根労働基準協会長安全衛生表彰
「優良職長賞」受賞
“企業は人なり“と言いますが、従業員の大多数が「大変勤勉で粘り強い」ことを強く実感しています。このことは会社の財産だと思っています。
グループ企業全体で行っている「QC活動」というものがありまして、各拠点単位でコスト改善・設備改善・品質向上などの課題に取り組んでいるのですが、当社のメンバーは毎回良い評価をいただいております。地方大会で勝ち残り、親会社で行う大会まで進出することも多いんですよ。
2012年には、親会社のNOKグループ(国内外 約100社以上)で最も栄誉のある団体表彰も受賞しています。
島根県民の気質とでもいうのでしょうか、“何かを始めたら最後まで諦めずにやり遂げる力”みたいなものを持っている社員が非常に多いと感じています。
また、島根は台風や地震などの自然災害が少ない地域でもあるので、“売れたものだけ作る”という当社の生産活動に適しています。全国の神様が集まってくる出雲大社が近くにありますから、きっと神様に守られているんですね(笑)。
ただ、この辺りは山間部なので冬場は雪が多いから、道路の雪掻きがちょっと大変ですけどね。それも従業員による除雪作業などによって、うまく凌いでいます。
あとはなんといっても、島根の食材と温泉が魅力ですね。地酒の種類が豊富ですし、肉も魚もとても美味しい。グループ会社の社員も、毎回島根への出張は楽しみなようです。県外からのお客さんが来られたときはよく玉造温泉などへ案内しますが、皆さん大変喜ばれますよ。
手厚い支援に感謝、と語る高瀬社長
会社設立に当たっては、島根県や雲南市の細かく親切・丁寧な支援をいただき、大変助かりました。企業立地に関する助成金もとても手厚いです。
行政の方の定期的な訪問によるフォローアップもしっかりしていて、安心して会社運営できています。
5.逆に島根県のデメリットと感じられていることをお聞かせください。
空港利用で東京へのアクセスもスムーズ
以前は山陰地方へはアクセスが良くないイメージもありましたが、最近は松江自動車道も整備され、岡山事業場までの移動が便利になりました。
出雲から東京まで空路で1時間25分ですので、東京のイーグル工業本社までの移動もスムーズで、特に不便さやデメリットは感じていません。
6.採用にあたって、御社の求める人物像についてお聞かせください。
チャレンジできる社風が魅力
一番大切なのは「やる気」ですね。
やる気があれば、知識や技術はあとからついてくるものですから、まずは仕事に対する強い意欲が必要です。
当社は“チャレンジ出来る会社”ですので、意欲がある方はどんどんチャレンジしていただいて、どんどん成長できる環境があります。
7.人材育成に関する考え方や取組についてお聞かせください。
地元人材の雇用を推進
当社では「地元への貢献と従業員の幸福増進」を社是としています。この理念に従って、地元雲南市の高校生を中心に、毎年7〜10名程度の新卒者を採用しています。
「製造業」と聞くとマイナスなイメージを持たれる方も少なくないようですが、実際に当社を訪問して工場見学などをしていただくと、衛生的で快適な作業空間を見られて「この会社で働きたい」と感じていただくことも多いようです。
数年前までは急激な増産対応として派遣社員に頼った時期もありましたが、会社が所在する地元の方を採用することで優秀な人財を集めて事業運営をすることが望ましいと考えています。
従って、海外研修生や派遣社員は雇用していませんし、この方針は変更することはありません。
8.親睦会やクラブ活動にも力を入れておられるとのことですが、こうした取組の内容や考え方についてお聞かせください。
企業内部活では珍しい相撲部も
従業員から選出された役員が自ら考え、自ら運営する親睦会「若竹の会」がありまして、年間を通じて新入社員歓迎会、夏祭り、新年会、旅行などの行事を行っています。
当社の平均年齢は35歳程度と若いメンバーも多いので、 従業員がスポーツを通じて活躍できる場を提供し、会社として活動を支援することで、必ず業務にも良い影響が生まれるものと考えています。
特に特徴的なのが、相撲部ですかね。企業内の部活としては珍しいかと思います。その他、野球部やバスケットボール部などがあって、近年このことが弊社への就職志望動機になっているケースも多いようです。
9.地域貢献活動も積極的にされていると伺っております。その内容や方針など取組状況をお聞かせください。
地域の方々と積極的に交流
“会社は地域があってこそ成り立つもの”と考えています。
平成26年2月島根県雲南市と「災害における施設使用に関する協定書」を取り交わし、従業員400名とご近所の10名分の「緊急避難物資」を購入しました。同時に地域住民の方を招いて「避難所と緊急物資の説明会」を行いました。
また、地域自主組織「多根の郷」様の避難訓練に避難場所を提供したり、美化活動を実施したり、夏祭り参加させていただいたりして、地域住民の方との交流は活発に行っております。
10.2020年に創立30周年を迎えると伺いました。ここまで長く事業を継続できた理由はどのようなところにあるとお考えですか。
人財の力が最も大きい、と語る川上部長
当社の製品、例えばリップシールなどは、世界の流通量のうち90%以上という圧倒的なシェアを確立しています。
これらの製品は一見単純な構造に見えますが、実はかなり精密な部品でして、大量生産しつつも品質を保つためには、ひとつひとつを「きちんとつくる」ということが非常に重要です。
当社がこのような高いシェアを獲得できた背景には、やはり「人財の力」が大きいと感じています。先ほど申し上げたような、真面目で勤勉な当社の「人財の力」を結集することで、業界におけるトップシェアを維持することができているものと自負しております。
11.今後の事業展開、展望についてお聞かせください。
自動精密組立機械が並ぶ工場内
人材育成作業訓練道場
自動車業界は、近未来に電気自動車へのシフト、いわゆるEV化という大きな変革を迎えることが予想されています。
当社としては現行品目の受注を確保し、原価低減や生産性の向上を実現しながら、親会社との連携によるEV化の製品開発や生産の立上げが必要と考えています。
会社の基本情報およびお問い合わせ先
- 会社名:
- 島根イーグル株式会社
- 所在地:
- 〒690-2706 島根県雲南市掛合町多根212−3
- 連絡先:
- TEL:0854-62-1581
FAX:0854-62-1584 - URL :
- https://www.ekkeagle.com/jp/sek/
(平成30年取材)