立地企業インタビュー

立地企業インタビュー

トップページ立地企業インタビューカツデン株式会社(島根益田工場)

カツデン株式会社(島根益田工場)
(旧 カツデンアーキテック株式会社)

江津工場工場長 横町 彰一氏管理課 課長 坂田右京 氏

東京都台東区に本社を構え、オリジナル階段の製造・販売を中心とする金属加工メーカーのカツデンアーキテック株式会社。 2020年6月、西日本の生産拠点として、島根県益田市の石見臨空ファクトリーパーク内に島根益田工場を設立され、製品供給体制の強化を図っています。

石見臨空ファクトリーパークは、萩・石見空港に隣接する平坦な丘陵地にある緑豊かな工業団地。その中で「飛躍と挑戦」をコンセプトにデザインされた島根益田工場は、床に島根県石見地方で生産される「石州瓦」を敷き詰め、その上に陶芸家・藤原郁三氏による作品『大地の力』を展示した中庭を設置するなど、島根と共に歩もうという同社の熱い想いが詰まっています。

島根益田工場の坂田課長と鎌谷工場長のお二人に、新拠点として島根県に立地した経緯や、人材確保などについてお話を伺いました。

1.御社の事業内容と島根益田工場の位置づけについてお聞かせください。

西日本の製品製造拠点として

ショールームに展示している住宅用階段 ショールームに展示している住宅用階段

弊社は主に住宅関連のインテリアやエクステリアを製造・販売している金属加工メーカーです。中でも住宅用階段に関連する製品の取り扱いが最も多く、それ以外にもサイクルスタンドや車止め、薪ストーブなども取り扱っています。

島根益田工場は、住宅用階段や住宅関連製品の製造を担っており、西日本のお客さまの製品製造拠点として重要な拠点と位置付けています。また、工場内に弊社製品を展示するショールームも設けておりますので、西日本のお客さまに、実際の商品や商品の製造過程を見ていただける場所にもなっています。

2.島根県に進出された経緯についてお聞かせください。

いざという時に頼れる人がいると確信を持てた

島根県に進出するにあたって、弊社の製造工場が埼玉県にしかなくて、効率よく全国に製品を供給していくには西日本に製造拠点をつくる必要があるという課題があったのですが、それ以上に生産職の人材確保の問題がありました。

製造業なので、モノをつくるには機械や設備が必要なのはもちろんですが、それ以上にノウハウや技術の継承が必要になってきます。そのためには人材を確保して、技術を覚え、身につけていかなければなりませんが、埼玉の工場ではなかなか思うように人材確保ができなくなっていました。そこで会社の未来を考えて、技術を継承してくれる人材も確保できる、新たな製造拠点を西日本で探すため、東京にある各県の事務所に行ってヒアリング調査を行いました。そのとき島根県がどこよりも熱心に相談にのってくれて、弊社の工場建設を歓迎してくれているという想いがヒシヒシと伝わってきました。
現地調査に行った際も、県や各市町村のご担当者はもちろん、近隣の企業さんまでも「ぜひ、来てください!」と歓迎してくださったのは決め手のひとつになりましたね。

新しい場所に工場を建てるというのはビルの一室を間借りするのとはわけが違います。この先間違いなく直面するであろう問題が生じた時に、サポートしてくれる、相談に乗ってくれる、助けてくれる、何かアドバイスをしてくれる、という頼れる人が島根にはいるんだと確信を持てたのは本当に大きかったです。

3.実際に島根県に立地されて良かったと思われる点をお聞かせください。

技術を継承してくれる人材に出会えた

採用も担当されている鎌谷工場長採用も担当されている鎌谷工場長

島根で出会う人がいい人ばかりという部分もありますが、もう一つ、弊社の「人材の確保」という課題をクリアできているのも大きいですね。

2020年の6月に工場が完成したのですが、行政の手厚いサポートもあって採用活動を順調に進められ、10名で島根益田工場のスタートを切ることができました。それからたった1年で、従業員が20名まで増えています。埼玉では1名採用できるかできないかという状況だったことを考えると、島根に来て本当に良かったと思いますね。

4.逆に島根県のデメリットと感じられていることをお聞かせください。

今後の改善に期待

物流業者との交渉で苦戦を強いられる場面も物流業者との交渉で苦戦を強いられる場面も

この工場があるエリアに通っているネット回線が、社内システムを動かすに足る要件を満たしておらず、専用回線を引いて対応しています。まさかのトラブルでしたが、現在、県や市が改善に向けて動き始めてくれているようなので期待しています。
また、製品を配送するに当たって、弊社と同じ様なサイズの製品を扱う会社が県内に少ないようで、配送してくれる業者さんが近場になかなか見つかりませんでした。県外の業者さんにわざわざ立ち寄ってもらうのもコストがかかってしまいます。色々と調べたり紹介を受けることでなんとか協力してくれる業者さんを見つけましたが、正直苦戦しました。

5.人材確保支援サポート事業を活用されたご感想、ご意見をお聞かせください。

行政の手厚いサポートでミスマッチが減った

県の支援策の一環で制作した採用パンフレット 県の支援策の一環で制作した採用パンフレット

埼玉では、学生のやりたいことを踏まえて学校が選定した企業が充てがわれ、面接するというようなスタイルが実態でした。そのため、弊社のことをあまり知らない状態で入社して、入社後にイメージと違うという理由で離職するケースもありました。一方、島根は県や市が一体となって、企業が学生にアピールできる機会をたくさん提供してくれます。そこでしっかりと弊社のPRができますし、興味を持ってくれた方には、工場見学に来てもらっています。そうすることで、学生もより具体的に入社後のイメージを持つことができて、お互いに齟齬が生まれにくくなったと思います。

さらに、学生と会う機会の提供だけでなく、そのときに話す内容や話し方を含めた空気づくりの方法、配布資料のアドバイスなどもしてもらいました。前述の通り、今までは高校生向けの企業説明会をほとんどしたことが無かったわけですから、とても参考になっています。

島根県は高校卒の入社後の離職率が低い方だと聞いたことがあるのですが、県や市の取り組みによって学生側も自分でしっかり判断したうえで入社しているから、離職率が低いのかなと思います。

6.採用にあたって、御社の求める人物像についてお聞かせください。

社風に合う人間性を重視

個性や雰囲気といった人間性を何より重視しています。というのも、「自由な意見やアイデアを好きなように形にして、やってみてから考えよう」という考えを弊社は持っていて、社長と社員の距離も非常に近いので、意欲があれば色んなことにチャレンジできる環境があります。
未経験でもスキルは入社してから身に付けることができるので、ものづくりが好きで、意欲や目的意識のある、弊社の社風に合った方を採用したいですね。

7.採用後、島根県の人材の特徴として感じられることはありますか?

素直で真面目な人材が多い

島根益田工場で働く社員の様子 島根益田工場で働く社員の様子

島根の方は、本当に真面目だと感じますね。責任感が強くて、仕事も真摯な姿勢で取り組んでいますし。それに、わからないことをわからないままにせず、解決するために「どのようにすればいいですか?」と聞いてくる素直さがあるのも特徴かなと思います。

8.福利厚生などへの取り組み内容や考え方についてお聞かせください。

海が見える社員寮・ゲストハウスを建設して新たな働き方を模索

建設予定のゲストハウスから見える持石海岸(益田市)建設予定のゲストハウスから見える持石海岸(益田市)

島根益田工場から車で10分くらいの海が見える場所に、来年竣工予定で社員寮とゲストハウスを建設することになっています。これができると、外国人技能実習生や転勤者の住まいとして、また工場見学に来られたお客様や出張者の宿泊施設としても活用できます。

それに、せっかく島根という環境の良い場所に拠点ができたので、新しい働き方ができないか模索しています。普段は東京本社で設計などの事務作業をしている社員が、1週間から1ヶ月くらい益田のゲストハウスに泊まって、海を見ながらテレワークで仕事をしたり、工場に来て製品を確認したり、休日には釣りやゴルフに行ったり。いわゆる、ワーケーションで心身ともにリフレッシュしてもらいたいと考えています。

9.地域貢献活動の内容や方針など取組状況をお聞かせください。

コロナ収束後には地域イベントへの参加を検討中

島根益田工場の操業開始直前から、新型コロナウィルスの問題で地域のイベントが中止になっていて、残念ながら全然イベントに参加できていないのが実情です。先日も、益田市恒例の「清流高津川いかだ流し大会」というイベントに向けて、弊社の金属加工技術を活かした鉄のいかだを作って参加しようと盛り上がっていたのですが、中止になってしまいました。
コロナ禍が落ち着いてイベントが開催されるようになったら、改めて参加を検討していきたいと思っております。

10.今後の事業展開、展望についてお聞かせください。

柔軟に対応できる技術力を備えた“強い工場”を目指して

問い合わせが増えている室内アスレチックシリーズ問い合わせが増えている室内アスレチックシリーズ

弊社は、お客さまから「階段メーカー」「手すりメーカー」と認識されがちなのですが、「金属加工メーカー」ですので、既存製品にとらわれず、時代のニーズを模索しながら新規事業の画策を続けています。

例えば、住宅の中で使うアスレチック器具を10年ほど前から製造・販売しているのですが、 これは“子どもの運動能力が低下している”“遊具のある公園が減っている”という問題に金属加工メーカーとして何かできないかと考えている中で、「公園の遊具が家の中にあればいいのでは?」という発想から生まれました。家の中に遊具があれば、誰かに迷惑をかけることもないですし、親の目が届くところにあるので危険もありません。当初、子ども向けに製造していたアスレチックシリーズですが、巣ごもりによる運動不足解消アイテムとして大人からも注目されています。

このように、住宅用関連商品を主に取り扱っていますが、世の中の抱えている問題を弊社の技術を活かして解決できるなら、色んなことに取り組んでいきたいと思っています。

今は、新しい商品は埼玉の工場で製造・検証してから販売していますが、いずれ島根益田工場の技術力もどんどんアップさせて、柔軟に対応できる技術力を備えた“強い工場”として新商品をどんどん生産できる工場に育てていきたいと思っています。

11.島根県民や他の事業者へメッセージなどあればお聞かせください。

都会の利便性に負けないものを得られる島根県

島根は、都会と比べると「何もかもが揃っていて便利」ということは決してありませんが、ちょっとした不便さの代わりに健やかな職場環境や優秀な人材などを得ることができました。もちろん、生活するうえで困るということは全くありません。
都会の利便性を取るのか、都会にはない島根の充実した部分を取るのか、各事業者の皆さんの取捨選択が必要かと思いますが、少なくとも私たちは、都会の利便性に負けないものを島根で得られていると感じています。

特に人材という面を考えると、弊社のような製造業は狙い目だと思います。というのも、まだまだこの辺りには製造業者が少ないので、ものづくりをしたいと思っている人たちの選択肢が少ないのが実情です。今働いている若い社員からも、「とりあえず製造業だったから、はじめカツデンアーキテックに興味を持った」という理由も聞きます。もちろん、弊社のやっているものづくりに魅力を感じてくれるならば弊社に来てもらえれば良いですが、それとはまた違ったものづくりを求める人も当然たくさんいます。色んな業種の色んな事業者の皆さんに来ていただきたいです。

まずは、島根を企業立地の選択肢の一つに加えてみて、ぜひ一度足を運んでみていただきたいですね。

会社の基本情報およびお問い合わせ先

カツデンアーキテック株式会社

会社名:
カツデン株式会社
所在地:
島根県益田市虫追町ロ320-119 石見臨空ファクトリーパーク内
本社 :
東京都台東区上野5-25-11 大和上野ビル7F
連絡先:
TEL:0856-28-8019
FAX:0856-28-8039
URL:
https://kdat.jp/

(2021年7月取材)

< 立地企業インタビュートップへ戻る