立地企業インタビュー
立地企業インタビュー
トップページ立地企業インタビュー松江山本金属株式会社
松江山本金属株式会社
代表取締役社長 山本泰三氏
大阪のものづくり企業である株式会社山本金属製作所のグループ会社として、2016年より松江市のソフトビジネスパーク島根で始動した松江山本金属株式会社。
グループにおける中・大物加工に特化した拠点として、エネルギーインフラ部品、工作機械のコア部品など大型かつ高精度な部品加工を手掛けています。
緑に囲まれた高台に位置する近代的な外観の工場の隣には、広々としたグラウンドや枯山水の庭園が美しい研修棟が併設され、働きやすい環境が整備されています。
代表取締役社長の山本社長に、島根県進出の経緯や今後の事業展望などについて伺いました。
1. 御社の事業内容についてお聞かせください。
当社にしか作れない高精度な大物加工が強み
当社のコア技術としては「大物加工」と「計測評価」があり、この2つの技術を掛け合わせて、皆さまの生活を陰ながら支える“なくてはならないものづくり”を特徴としています。
大物加工技術については、例えば発電施設等のエネルギー分野で使用される部品や、ショベルカーの油圧機器エンジンに使われるシリンダーブロックなど、中・大物に特化した部品を、高精度を保ちながら製造できるのが強みです。
計測評価事業というのは、グループ会社である山本金属製作所が開発した画期的な技術で、マシン加工中の温度を可視化する「MULTI INTELLIGENCE(マルチインテリジェンス)」、材料の応力を測定する「MIRS(ミルス)」によって、加工と精度を「見える化」しています。
2. 加工と精度の「見える化」とは、具体的にはどういうことですか?
大物加工を支える2つの計測評価システム
従来の切削加工では、材料の「より良い削り方」を追求するとき、熟練の職人の経験と勘に頼らざるを得ませんでした。しかし計測評価によって切削技術そのものの「見える化」を図り、数値化・分析することで、「より良い削り方」を定義することが可能となりました。
例えば材料に対する工具の刃の当て方であったり、そのときの材料の適正な温度であったり、そういったものを、人間の感覚ではなく数値で定義できるようになり、結果として生産性が向上し、人的コストが削減できました。
3. グループ会社全体の中における松江工場の位置づけは?
豊かな自然に囲まれたソフトビジネスパーク島根に立地
当社は7つの企業によって構成された「山本金属グループ」の一員であり、2018年に島根県松江市にて本格操業しました。グループ本社である株式会社山本金属製作所は、60年近く続く歴史のある企業です。
グループカンパニーの中で島根の松江工場は、中・大物加工の製造拠点という役割を担っています。
自然豊かで暮らしやすい松江市のソフトビジネスパーク島根に工場を構え、広大な土地を活かして、最大6メートルに及ぶ製品の製造に挑んでいます。
4. 島根県に進出された経緯についてお聞かせください。
産学官連携のしやすさも重視
2007年に山本金属製作所が経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」に選出されたことをきっかけに、島根県より熱烈な進出オファーを受けました。
他県からも様々なアプローチがありましたが、最終的に自然が豊かでワークライフバランスが取りやすいことで質の良い仕事ができる点と、地理的に大学や専門機関がすぐそばにあり、産学官連携がしやすいことが大きな決め手となり、島根県に進出を決めました。
また、地震が少ない地域であるという点も重視しました。当社の製品は精度が命ですので、地震の影響で機械の精度が少しでも狂ってしまうと業務上の影響が大きいためです。
5. 実際に島根県に立地されて良かったと思われる点をお聞かせください。
行政のきめ細やかな対応に感謝、と語る山本社長
鋳物加工を得意とする当社にとっては、鋳物メーカーが数多く県内に立地しており、素材から加工におけるサプライチェーンとしての連携がしやすい点が大きな魅力です。
主要取引先においても、今後島根での生産量を拡大していく動きがあり、当社においてもそれに伴い順調な事業拡大を期待しています。
また、行政の支援が大変手厚く、きめ細かな相談対応に大きなメリットを感じています。
当社の経営陣にもともと島根との地縁はありませんでしたが、ご支援のおかげで地元の企業や人々との繋がりを着実に築くことができています。
6. 逆に島根県のデメリットと感じられていることをお聞かせください。
物流面・交通面の今後の改善に期待
基本的に取引先が県外のため、物流面や移動のための交通の点で、どうしてもコストがかさんでしまうことです。
また、当社のような大型の加工設備を保有する協力企業が少ないことも、課題の一つと捉えています。
近い将来、自動運転の発達などによって、これらの問題が少しでも解決に向かうことを期待しています。
7. 採用にあたって、御社の求める人物像についてお聞かせください。
イメージ刷新のためユニフォームもリニューアル
当社は『ものづくりを通じて、社会の発展・お客様の長期繁栄に貢献し、積極果敢に時代を創っていこう!そして、自発的な意欲にて、自分自身を成長させていこう!』という企業理念を掲げております。
これは50年後、100年後も変わらず継承していきたい、非常に大切な理念ですので、代表である私自ら、工場見学に来られる求職者の方々に必ずお伝えしています。
このような価値基準に共感していただけるような、前向きで強い気持ちを持っている人が弊社の求める人物像です。
8. 島根県の人材の特徴として感じられていることはありますか。
女性社員も活躍中
グループ本社が大阪にあるため、大阪と比較してですが、ややおとなしい人が多いように感じます。大阪は古くから商業のまちですし、とりわけ元気のいい地域というのもありますが。
一方で、真面目にコツコツと丁寧に仕事を進める人が多く、ものづくりに向いていると感じています。
また、言わなくても相手を察し、チームプレイができる気質があるように感じています。
9. 人材育成に関する考え方や取組についてお聞かせください。
まるで生きているかのように精密なメタルカブトムシ
積極的にスキルアップを目指してもらえるよう、個々の教育計画を策定し、資格手当制度等により資格取得をバックアップしています。
他にも、新人教育の一環として、顧客メーカー様の工場で研修し、機械操作やプログラム作りの基礎を学んだり、自己啓発にてeラーニングも導入しています。
人材確保面では、HPやSNSを活用した対外的な情報発信を強化し、当社の事業内容に少しでも興味を持ってもらえるよう、学生にとってより身近なものを金属で製造する試みなどを行っています。
例えば、京友禅とコラボした金属製のうちわや、精細な作りの金属製のカブトムシなどを見ていただくことで、ものづくりの面白さや、当社の加工技術レベルの高さを目で見て実感していただけたらと考えています。
10. 福利厚生などへの取り組みの内容や考え方についてお聞かせください。
独身者にも好評の炊き立てご飯無料提供
社員に地元の美味しい食材を味わってもらえたらと、週3回昼食時に炊き立てご飯の無料提供を行っています。独身の社員も多いので、おかずだけ持参すれば、暖かいご飯をお腹いっぱい食べられるようにと始めた試みです。
その他、コーヒーメーカーも導入して、休憩時間が少しでも癒しの時間になるようにと願っています。
11. 地域貢献活動(祭り・イベント等)の内容や方針などあればお聞かせください。
人が集まる場所を提供することで地域に貢献したい
当社工場のすぐ隣に広いグラウンドを保有しており、社員のフットサル・テニスなどの部活動にも使われていますが、地域のスポーツ少年団やサッカー教室、大学のクラブ活動にも貸し出しを行っています。
直近では、地元ミュージシャンや飲食店が実施するハロウィンイベントにも活用していただく予定で、約2,000人の来場が見込まれています。
こういった人が集まる場を提供することで地域貢献したいという思いがあり、今後の地域活性化のためにも、地域に親しまれる会社づくりを意識しています。
12. 今後の事業展開、展望についてお聞かせください。
5年以内に社員数倍増を目指す
大物加工事業の更なる強化を図り、現在の3倍の生産力を目指すとともに、高周波熱処理、研削加工などの新たな加工分野への取り組みも進めていく方針です。
社員数も5年以内に50名程度から100名程度に倍増する計画があります。
そのためにも、まずはこれまで大切にしてきたお客様との信頼関係をより強固なものにし、設備投資や省人化を推進して一人一人の生産性を高めることで、より強い企業となっていくことを目指します。
会社の基本情報およびお問い合わせ先
- 会社名:
- 松江山本金属株式会社(松江工場)
- 所在地:
- 〒690-0816 島根県松江市北陵町30 ソフトビジネスパーク島根内
- 本社:
- 〒547-0034 大阪府大阪市平野区背戸口2-4-7
- 連絡先:
- TEL:0852-27-1800
FAX:0852-27-1802 - URL:
- https://www.matsue-yamakin.co.jp/
(2023年8月取材)