立地企業インタビュー

立地企業インタビュー

大見工業株式会社

大見工業株式会社代表取締役大見満宏さん代表取締役 大見満宏 氏

愛知県安城市に本社を構え、総合切削工具メーカーとして、業務用から家庭用まで幅広い切削工具の製造を行っている大見工業株式会社。
2012年に島根県益田市に島根益田工場を増設、さらに2017年には同工場の生産設備増設も決定しており、島根の地においても順調に事業を拡大しておられます。

同社の代表取締役、大見満宏社長に、島根県に工場を立地した経緯や、好調な地元人材採用の秘訣について伺いました。

1.国内に3拠点ある工場の中での、島根益田工場の位置づけは?

主に一般向け切削工具の製造拠点として

大見工業で制作した部品確かな技術と品質で、業界での信頼も厚い

愛知県内の2工場では、主に自動車や航空機などに使用する精密切削工具を製造しているのに対し、島根益田工場では、ホームセンターなどで売られているような、一般向けの切削工具(穴あけドリルなど)の刃物部分の製造を行っています。

2.地方での工場増設を検討された際、島根県が候補に上がった経緯についてお聞かせください。

「神話の国で生まれた製品」に価値あり

代表取締役大見満宏さんにインタビューをしている様子

工場の増設については、実は最初は中国や東南アジアを検討していました。
以前タイにも工場を持っていましたからね。かなり具体的な話まで決まりかけていましたが、リーマンショックの影響で一時ペンディングに。

ちょうどその頃、島根、長崎、沖縄等から誘致の声がかかり始めました。最初は国内での増設は一切頭になかったんですが、特に島根県からはかなり熱心に声をかけていただいて。いろいろ考えているうちに、実際海外で製造をしてしまうと、製品そのものはMADE IN CHINAやMADE IN VIETNAMになってしまうこともありますし、やはり「MADE IN JAPAN」の価値を再認識したこともあって、国内での拠点増設に考えがシフトしてきました。

島根県という土地に魅力を感じた理由の一つとしては、神話に出てくる神々の約8割が島根の出身である、ということもあります。そういう部分って、実は日本という国の根幹なんじゃないかと思うんですよ。神様がたくさん生まれた地で製造する製品、ということには、ブランドイメージにも寄与するところがあると考え、最終的には益田市さんの熱烈なアプローチを受けて、島根での工場立地を決めました。

3.実際に島根県に立地されて良かったと思われる点をお聞かせください。

ものづくり文化が根付く土地だった

大見工業で働く女性社員製造業ながら女性社員の割合が高いのも特徴

たくさんありますよ。
まず、地元採用が順調にできていること。行政の支援が手厚いこと。それから、昔からものづくりの技術が伝承されてきた土地であること。

昨年11月に東京で世界的な見本市がありましてね。弊社も海外の取引先の方々を招いて、島根益田工場まで案内したんですよ。神楽を鑑賞してもらったり、美しい景色を見ながら食事をしてもらったりして、皆さん島根を大変気に入ってくれました。その時のお土産として、弊社のお取引先様でもある吉原木工所さんの組子を使った置物を贈ったところ、とても喜んでくれて。

島根にはそういったものづくりの技術が継承されていて、今でも若い職人が多数活躍しておられます。そういう意味でも、ものづくりに適した環境であると感じています。たたら製鉄の歴史もあるし、ヤスキハガネの生産地でもありますしね。

4.では、逆に島根県のデメリットと感じられることをお聞かせください。

真面目な県民性は◯、もう少し積極性が欲しい

メリットとデメリットは表裏一体ですからね。高速道路の整備が不十分なので、物流面で不便に感じるところもないわけではない。
でも全国どこもかしこも便利になってしまえば、地域ごと、企業ごとの特性がなくなってしまいますから。

現在、平均月1ペースで愛知と島根を行き来していますが、朝7時半過ぎに名古屋を出て、昼12時前には島根益田工場に着きます。片道4時間半。意外と近いですよ。ですから移動距離的なデメリットはそれほど感じていません。

県民性という意味では、基本的に真面目な人が多くて、製造業に向いていると思うのですが、ちょっと引っ込み思案なタイプの人が多いかな。
「俺がやってやる!」みたいなタイプが少ない。
もう少しアグレッシブさがあるとよりいいなと思います。

5.御社では人材の育成にも力を注がれているとお聞きしましたが、
入社後のフォローアップ体制や、効果的な育成のための施策などありましたらお聞かせください。

わかめ漁に自衛隊・・・一風変わった研修で己を高める

大見工業新入社員研修の様子新入社員研修でわかめ漁を体験

大見工業自衛隊研修集団行動・集団責任の厳しさを知る自衛隊研修

弊社は新入社員研修のやり方にかなり特徴があります。入社後約1ヶ月間に渡って、様々な体験をさせます。

まず最初に、東北地方での「わかめ漁体験」。漁師さんの家に寝泊りさせてもらい、繁忙期のわかめ漁を一週間徹底的に手伝う研修です。我々の本業とは全く違う業種ですよ。新入社員たちは右も左もわからないまま必死で漁を手伝い、東北弁で怒られながら、早く正確に仕事をすることの大切さや、地元の人々の温かさを知り、個々に多くのものを得て帰ってきます。

その後は自衛隊研修へ。実際の自衛隊の厳しい訓練を受けます。一人の失敗はみんなの責任、という連帯責任も体感します。自衛隊研修は、自衛官の方がとても上手に怒ってくれるところがいいんですよ。最近の上司は怒るべき時に怒らないでしょ。自衛隊ではちゃんと叱るべきときに叱ってくれる。最近の若い子は、とよく言われているけれど、本当は周囲がちゃんと叱ってあげられてない、教えてあげられてないだけなんじゃないかなと思うこともあります。

大見工業自衛隊研修集団行動・集団責任の厳しさを知る自衛隊研修

最後は社内研修。毎年全社で行うイベントの企画・運営をすべて新入社員に任せます。イベント開催の予算の使い道まで、本人たちに考えさせるようにしています。こうして入社から1ヶ月の間は、全く本業とは違ったことばかりやらせているんですよ。

一連の研修の締めくくりは、研修発表会です。新入社員の親御さんや高校の恩師の先生方にも参加していただき、研修の様子を撮影したビデオを見て頂いたり、ひとりひとりに研修の成果を発表してもらったりします。我が子の成長した姿に、思わず涙する親御さんもおられます。

そういったユニークな研修をやってる会社だってことが、口コミでじわじわ広がっているようですね。面接で話を聞くと、それが入社志望の動機になっている子もいたりします。
でもだからといって、当社の研修のやり方が100%正解だとは思っていません。今後もどういう研修をやっていくのがよいか、絶えず工夫と改善をしていきたいと思っています。

6.地元高校生の新卒採用も順調に進めていらっしゃると伺いましたが?

生徒を安心して任せられる!との嬉しいお言葉も

順調と言い切ってていいのかはわかりませんが・・・そうですね、地元の高校とは良いお付き合いをさせていただいております。
2014年は8人、2015年に7人、2016年に11人の高校新卒の方の採用をさせていただきました。
製造業は入社後3年以内の離職率がすごく高い、などと世間では言われていますが、当社は新入社員の離職率は割と低めです。
それから製造業というと、工業系の生徒さんが多いのでは、と言われることもありますが、実際はそんなこともありません。履修コースに関わらず、女性も含めて、毎年入社いただいています。
先ほどお話した新入社員研修の発表会や保護者懇談会などの場には、社員のご両親はもちろん、高校の恩師の先生もお招きしています。
そこで工場を見学いただいたり、実際に新入社員が働いている姿もご覧いただくのですが、ご両親も先生も、短期間でこんなに立派に成長するんですね!と感動されます。
毎年卒業生さんに入社いただいている高校の進路指導の先生からは、「大見工業さんには生徒を安心して任せられます!」と有難いお言葉を頂戴しました。

7.御社では例年地元のイベントなどにも積極参加されているそうですが、どのような効果が期待されますか?

地域とのつながり、社員同士のつながりを深める

石見空港マラソン大会の様子仕事以外での社員同士の交流も大切に

石見空港マラソン大会の様子仕事以外での社員同士の交流も大切に

はい、地元のマラソン大会には毎年社員数名と共に参加させてもらっています。あくまで自由参加ですが、年々参加社員数も増えてきています。
中には、誘われて嫌々参加している人もいるかもしれませんけどね(笑)。毎回オリジナルTシャツを準備して、全員完走を目指して臨みます。
こんなことをやっているのも、社員の皆さんには仕事の楽しさをもっともっと感じて欲しいという思いがあるから。そのためにも、敢えて仕事以外の場所で、仲間と共にゴールを目指して奮闘する経験も大切なのではないかと考えます。

それから、地元商工会主催の「ますだ産業祭」へも毎年出店しています。地域の皆さんに「大見工業」という名前を知ってもらって、どんなことをやってる企業なのかを知っていただくことで、徐々にですが採用活動などにも良い形で繋がっていることを感じています。

8.御社の求める人材とは?

失敗してもいい、いずれは自分で判断できる人材に

入社後2・3年はたくさん失敗してもいいから、いずれは自分の意見がはっきりいえ、自分で判断できる人間になってほしいですね。
弊社は拠点が愛知と島根にあるので、愛知でもやってみたい!という人はどんどん異動させてあげたいと思っています。
本人のやる気さえあれば、どんどん伸ばしてあげられる環境があります。

会社の基本情報およびお問い合わせ先

大見工業株式会社の外観

会社名:
大見工業株式会社(島根益田工場)
所在地:
〒698-2144 島根県益田市虫追町口320-105
本社 :
〒446-8588 愛知県安城市新明町27-7
連絡先:
TEL:0856-28-8028
FAX:0856-28-8027
URL :
http://www.omikogyo.co.jp/

(平成29年取材)

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