立地企業インタビュー
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株式会社セラク
みどりクラウド事業部 部長
ITインフラ構築やWebサイト制作、スマートフォンアプリ開発など、インターネットを軸にしたサービスを提供する株式会社セラク。東京に本社、全国に複数の支社があり、従業員数は1,800名を超えます。
そんな株式会社セラクは現在、農業向けITサービス「みどりクラウド」の事業に関する研究開発のため、島根県奥出雲町に「農業IT研究所」としてオフィスを構えています。
島根県へ立地することになった経緯や事業の内容・今後について、みどりクラウド事業部 部長にお話を伺いました。
1.御社の事業内容や開発・製造されているものについてお聞かせください。
環境モニタリングサービス「みどりモニタ」
当社は今年で32期目を迎えるIT企業です。インフラ構築やWebサイト制作、Webマーケティングなど、ITを活用したビジネス支援を主な事業としています。
もともと当社が地方創生や環境問題について関心を持っていたことや、アンドロイドOSを様々な端末に組み込んで製品を作るという取り組みを行っていく中で、野菜の栽培を行うシステムを作った経緯などもあり、農業向けITサービス「みどりクラウド」に関する事業がスタートしました。
当社が主軸とするIT事業でこれまでに培った技術を農業に活用し、地方活性化に貢献したいということで、IoTをはじめとした技術を構築していきました。
2.「みどりクラウド」のサービスについてお教えください。
圃場環境を計測する「みどりボックス」
「みどりクラウド」は、農業にITの技術を導入し、生育環境や作業状況を計測・記録してデータ化することで、作業を見える化する生産支援サービスです。
たとえば、展開するサービスの一つに環境モニタリングサービス「みどりモニタ」があります。このサービスでは、圃場に「みどりボックス」というセンサーを設置することで生育環境を計測・記録し、離れた場所からも圃場の様子を確認することができます。また、農作業記録サービス「みどりノート」では、年間の作業計画から日々の作業までの記録・管理ができ、労働者や圃場の管理などにも役立ちます。
こういった機能で農業従事者の負担を減らすことができ、これまで感覚に頼ってきた作業やノウハウの共有がしやすくなり後継者を育成できるという効果も期待できます。
農業ITで成功している国の一つに、オランダがあります。
オランダは九州と同じくらいの面積で非常に小さな国ですが、世界2位の農業輸出国で、それだけ効率の良い生産をしています。そのオランダの農業を支えているのがITです。
農業に対してITができることは大きく4つ、計測・記録・判断・制御です。オランダの農業ITでは、この4つをすべて行っています。しかし、実際に現地に出向いてサービスや製品を見てみると、何でもできる分、かなり高額だったり、使いこなすためには研修が必要だったりと、これでは日本には合わないと感じました。
日本では農業者の平均年齢が高いこともあり、もっとシンプルで誰でも簡単に使えるものでないといけないと思ったんです。
そこで、判断・制御の部分は他に任せて、計測・記録に特化するものを作ろうということになりました。機能をシンプルにした分、価格を抑えて誰でも使いこなせるように開発したのが「みどりクラウド」です。
3.社内での島根の位置づけは?
奥出雲町三沢にある「みらいと奥出雲」
奥出雲町のオフィスは、「みどりクラウド」の研究開発拠点として活用しています。農業の現場は地方にあるので、現場で地域の方々と一緒にこの農業ITのサービスを良くしていこうと、併設されている農業用ハウスや地域で仁多米の生産をされている圃場をフィールドに研究開発に取り組んでいます。
また、社員の福利厚生の一環となるよう、リゾートオフィスとしての位置づけもあります。奥出雲町の他にも長崎県の南島原市にも農業IT研究所があるのですが、たまには社員にも都会を離れてゆったりとした環境で仕事をしてもらおうというねらいがあり、こういった拠点をかまえています。
昨年は田植えの時期に、本社の「みどりクラウド」チームのメンバーが奥出雲町に滞在して、“田植えハッカソン”を行いました。東京ではなかなか経験できない田植えを通して、農業を良くするための課題に取り組むことができましたし、滞在中は宿泊施設で自炊をしながら過ごしたこともあり、奥出雲町の自然や食のすばらしさを実感する良い機会となりました。
オフィスは、シェアオフィスとコワーキングスペースをあわせ持つ「古民家オフィスみらいと奥出雲」の一部をお借りしています。
4.島根県に進出された経緯についてお聞かせください。
オフィスに併設された農業用ハウス
当社はITを活用して地方創生や地域活性化を実現したいと考えており、その一環で、地方の主幹産業である農業をITで支援できないかと思いスタートしたのが「みどりクラウド」です。
そういった思いを形にするフィールドとして地方拠点の設立を考えていた時に、当社に島根県出身者が在籍していたことや企業誘致を積極的に行っていた島根県庁に相談したことがきっかけとなり、立地に至りました。
県内でもいくつかの市町村からご提案をいただきましたが、その中から、仁多米・仁多牛・えごまなど農業生産が盛んで、たたら製鉄から続くものづくり文化も根付いている奥出雲町に立地を決めました。
5.実際に島根県に立地されて良かったと思われる点をお聞かせください。
仁多米生産者の皆さんと
島根県に立地して良かったことは、地域の生産者の皆様にご協力いただいて実証実験を行うことができていることです。
2018年3月には地元の仁多米生産者の方々にご協力いただき、「奥出雲仁多米スマートアグリコンソーシアム」を立ち上げました。
これまで「みどりクラウド」はハウス栽培に使ってもらう機会が多かったのですが、稲作でも利用価値を生み出せないかと以前から考えていました。そこで仁多米生産者の方々にご協力いただいて、「みどりクラウド」を使って稲作にどんな良い効果があるのか試してみようと、実証事業が始まりました。
6.逆に島根県のデメリットと感じられていることをお聞かせください。
デメリットは人材の採用が難しいところです。
松江市や出雲市ではIT企業の立地も進んでいてITエンジニアの人材も多いのですが、奥出雲町のような中山間地域だと通勤の負担が大きくなってしまうこと、そもそもそういう企業が少ないことなどからIT技術者の採用が難しいのが現状です。
島根県主催のイベントには度々参加させてもらい、奥出雲の魅力を発信しながら県外からの人材獲得も図っています。
7.採用にあたって、御社の求める人物像についてお聞かせください。
新しいサービスを作るのが私たちのミッション
私たちのミッションは新しいサービスを作っていくことなので、知らないことに自ら貪欲に取り組んでいくことが求められます。
また、ITの知識か農業の知識のどちらかは持っていると良いと思います。
8.地域での活動の内容や取組状況をお聞かせください。
仁多米生産者の方と行った田植えの様子
当社のオフィスがあるコワーキングスペースでは、地域の方が主催の懇親会が開催されます。その際には私たちも参加させていただき、一緒に盛り上がります。
これは当社の事務所がある三沢地区の特色かもしれませんが、非常に歓迎していただき、地元の方との交流も盛んに行うことができています。地元に馴染むことができていると感じています。
9.今後の事業展開、展望についてお聞かせください。
今後は流通・販売にも新しいサービスを
現在は農業生産を支援するサービスとして「みどりクラウド」の提供を行なっていますが、今後、流通・販売の支援も行い、儲かる農業を実現する「農業ITプラットフォーム」として事業を拡大していきたいと考えています。
農業の一番の課題はやはり出口(消費者との関係)の部分です。その中でも、「この野菜がどういうふうに生産されてきたか」ということが消費者に伝わっていないことや、逆に、消費者側から生産者に伝えたいことを伝えることもできないということが問題だと考えています。
私たちがそこを繋げるような農業向けの情報プラットフォームを作り、ものの流通と情報の流通がセットになって動くような流れをつくっていき、農業界をより良くしていきたいと思っています。
10.島根県民や他の事業者へメッセージなどあればお聞かせください。
スマート農業で島根に貢献したい
個人的な話をすると、私は大学を出てから島根を離れてしまったのですが、どこかで島根のために貢献したいとずっと思っていました。そして、今取り組んでいるのがスマート農業です。
島根県は農業県でもあるので、農業をIT化することによって島根の農林水産業を盛り上げ、それが県全体の活性化に繋がればいいなと思っています。
もっとこのスマート農業を普及していければと考えているのと、様々な方と協業をしていきたいと思っていますので、ご興味のある方はぜひお声がけください。
会社の基本情報およびお問い合わせ先
- 会社名:
- 株式会社セラク(奥出雲農業IT研究所)
- 所在地:
- 〒699-1513 島根県仁多郡奥出雲町三沢501-1 奥出雲町起業・創業支援施設
- 本社 :
- 〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-5-25 西新宿プライムスクエア 6F
- URL :
- http://www.seraku.co.jp/
(平成31年取材)