[インタビュー]~人材確保支援の現状を聞く~

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[インタビュー]~人材確保支援の現状を聞く~

[インタビュー]~人材確保支援の現状を聞く~

近年、県外からのIT企業の立地増加に伴い、島根県内でITエンジニアの求人数が大きく伸びています。そういった中、島根県では県内に本社または営業所のあるIT企業への人材確保の支援として様々な活動を行っています。そこで、取り組みに至った経緯や狙い、手応えなどについて、この取り組みを支えるIT人材コーディネーター、巡回相談員、そして県の担当者にインタビューしました。

島根県がITエンジニアの確保に取り組む経緯とねらい

(インタビュー:島根県 商工労働部 産業振興課 情報産業振興室 植田さん)

現在、県内のIT企業各社の業績は好調で島根県としても喜ばしいことなんですが、その仕事を回していくためのエンジニアが不足しているという課題が出てきました。人材確保については、当然各社で取り組まれているわけですが、なかなかうまくいかない現状がありました。そこで行政も一緒に取り組んでいこうという発想からスタートしました。そのひとつが、首都圏で働くITエンジニアのUIターン転職を狙った無料職業紹介制度「IT WORKS@島根」です。
UIターンに興味のあるエンジニアさんに向けた無料職業紹介をおこなうIT WORKS@島根ですが、まずは無料登録していただくことで、月1回の求人情報の提供や、具体的に興味のある企業が見つかれば、面接までのサポートを受けられます。また、IT人材コーディネーターの面談を実施し、ご希望の内容やスキルに合った企業をご紹介するなどの対応もさせていただいています。
加えて、実際に島根県のIT企業と話をしていただく機会を設けるため、地元企業や立地企業さんにご参加いただいて、東京と大阪で転職フェアを開催しています。

現状、県内IT企業のエンジニアの不足数は60〜80名と言われていますが、このすべてをIT WORKS@島根が受け持つ(行政支援)というわけではありません。多くの場合は各社独自の取り組みで確保されていますから、IT WORKS@島根は、その中でも確保しきれていない20名前後を目標に設定しています。実績としては、昨年は16名、今年度は現時点で21名を確保できました。 こうした取り組みは島根県が初であり、他の都道府県に先んじて実施しています。

IT人材コーディネーターの想いと活動内容 ~ITエンジニアと企業を結ぶ~

IT WORKS@島根の運営を行うIT人材コーディネーターの鈴木翠さん、豊田昌代さん
IT WORKS@島根の運営を行うIT人材コーディネーターの鈴木翠さん(左)、豊田昌代さん(右)にお話を伺いました。

Q1.それぞれの役割を教えてください。

キャリアアドバイザー 鈴木 翠さんキャリアアドバイザー 鈴木 翠さん

私は、IT WORKS@島根の登録者に対し、移住を決定してもらうところまでを担当しています。具体的には、登録者のキャリア相談や各社の求人情報のヒアリングをし、登録者の希望にマッチした企業の紹介や、各人・各企業の転職活動のフェーズにおけるフォローを行っています。常に登録者の相談に乗りながら「移住決定」までのお手伝いをしていく仕事になります。キャリア相談をしたい方との面談では、実際に来社いただき対面での面談を行うこともありますが、エンジニアの方は時間の都合をつけることが難しい場合が多いので、skypeを使って面談を行うなど、臨機応変な対応を心がけています。

PR・Webプランナー 豊田 昌代さんPR・Webプランナー 豊田 昌代さん

私の役割は、「IT WORKS@島根」で支援する人材(登録者)を獲得するために、WebサービスやSNS、リアルを通じて様々な打ち手を企画し、実行することです。具体的には、IT WORKS@島根のサイトを通じた情報発信や、Facebook等を利用した島根県ゆかりの方との交流、都市部で開催されている島根出身者が集まるイベントなどに出向いた広報活動などを行います。 また、東京、大阪で県内IT企業が参加して開催する転職イベントの企画・運営も行っています。こういった「イベント」をフックに、IT WORKS@島根の登録者を増やしています。

Q2.仕事上、気をつけていることは?

(鈴木さん)
他県出身の方でも、地方志向の方や、奥様の出身地などといった理由で登録していただける方もいらっしゃいます。Uターンの場合だと、土地勘があったり、ある程度の情報をお持ちであったりと、ご自身で探せたりするんですが、Iターンや奥さんが島根出身などの場合だと、しっかり相談してから考えたい人が多いので、企業をご紹介する際にも、どういう背景があってどういう状況の人なのか?ということを把握してからご紹介するようにしています。スキルが活かせそうだけど、その方と合わなさそうな会社は紹介しないとか、スキルマッチングだけだとうまくいかない場合もあるので、そういう部分は気をつけています。

また、Iターンの方は、島根に来たことがない方が多いですし、Uターン者の方でも実際に勤務するオフィスの様子を見たほうが良いと思うので、内定が出るまでに一度は島根に来てもらえるよう、企業側と相談してコーディネートしています。1回であれば、交通費の半額補助制度が使えるので、それを活用いただき、来県していただくことをお勧めしています。その上で、企業とエンジニアご本人のスケジュールを確認し、来県のタイミングを調整しています。

(豊田さん)
この取り組みの開始当初は、島根県出身者のほうが登録してもらいやすいと考え、Uターンを狙った広報・PRをメインに行っていましたが、登録者数は伸び悩みました。そこで現在は出身者に限らず“地方志向のエンジニア”もターゲットに加えました。登録者の割合はUターン6割、Iターン4割です。日々「地方で、島根で働きたい人はどこにいるのか」「島根への移住を検討するキッカケは何なのか?」を考えています。これまでのフィードバックを得ながら、より効果的な集客・広報施策を企画・実行し、登録者増に繋げていきたいです。

また、イベントの集客では、田舎生活とか、ゆっくり過ごそうとか、ありがちな地方の一面のみをPRしても、そんなに興味を持ってもらえず、加えて企業とのミスマッチが起こりやすいことが分かりました。最近では、東京で消耗し続けるような働き方ではなくて、新天地としての地方に目を向けてキャリア形成しませんか?というようなメッセージを発信するようにしています。そういう内容の方が、今の風潮にあっているし、都市部で働く人にも興味を持ってもらえます。PRの際には、具体的な仕事の内容を示し、地方でも都会と同じようにキャリアアップでき、自分の専門分野を磨けるなど、“都市ではなく地方を選択する優位性”を強調するよう心がけています。

Q3.これまでの手応えは?

(鈴木さん)
昨日もIT WORKS@島根を通じて転職を決められた方が働く企業へ訪問してきたんですけど、その方がいきいきと働いている様子を実際に見ると、取り組みを続けてよかったなあと感じます。
また、皆さんによく言われるのが、島根県にこんなにたくさんIT企業があるんだ!ってことに驚かれることですね。そういうときはこっちも「そうでしょう!選択肢も多いんだから、あなたにあう企業はここだよ!」と胸を張って紹介することが出来ますね(笑)

(豊田さん)
転職イベントを開催した際の参加者で、「いつか帰りたいんだけど」とか、「5年後くらいに帰ろうと思っている」などと話していた方が、イベントで企業の方々と話をされて、「いい会社があったから転職することにした」と即決された事例を聞いた際には、この取り組みに参画してよかったと感じました。やっぱり島根の出身者の方々だと、直接お話をすることが大きく作用することが多いですし、企業とエンジニア双方が実際に会う場としてのイベントの重要性を感じます。

Q4.今後の取り組みは?

(鈴木さん)
エンジニアの仕事も企業の仕事内容、働き方もどんどん変化していくので、自分自身もその内容を理解していかなければなりません。各社の特徴や開発内容はもちろん、エンジニアのスキル・キャリアなどが理解できないと紹介もできないので、企業とエンジニア双方へのヒアリング力を高めていきたいです。そのためには、企業や世の中の動向、IT業界全体の流れも見極めつつ、自分自身も勉強し、経験を積んでスキルアップしていかなければと思っています。

(豊田さん)
私は人を集めるのが大きなミッションなので、エンジニアがどういった情報に注目するのか、各企業に貢献できるだけのレベルの高い登録者をどう集めていくのか?というところを日々考え、メディアの動向やエンジニアの志向性などを研究・分析していきたいです。近年、他県でも同様の取り組みが始まってきていますが、「島根で働きたいエンジニア」はどこにいるのか、どんな情報発信の方法が適しているのかなどを考えながらやっていきたいと思っています。

巡回相談員 ~企業の声をしっかり聞き、確度の高い情報を届ける~

島根県の巡回相談員の廣澤博さん、吉川雅司さん
島根県の巡回相談員の廣澤 博さん(右)、吉川 雅司さん(左)にお話を伺いました。

Q1.巡回相談員としての活動内容は?

巡回相談員の仕事は、県内に本社または営業所のあるIT企業の人材確保を支援することです。中途採用、新卒者の採用、それぞれについて、県内のIT企業を訪問し、スキルや人物像を含め、どのような人材を欲しておられるかを伺い、これらの情報をもとに人材確保の支援をしています。
企業訪問の件数は春先や秋口に増えるなど波はありますが、大体、月に15件くらい訪問しています。近年では、県外からの企業立地も増えていますので、県内にある営業所だけでなく、東京や大阪など、本社に直接訪問することも増えています。

このように企業訪問を通じて得た情報は、IT WORKS@島根に掲載している求人情報の付加情報として利用したり、月1回登録者にまとめて送る求人情報などに利用しています。

その他の活動としては、高校、大学、専門学校など、新卒者の中でIT企業への就職を希望する人がどれくらいいるかなどを調査して、県内IT企業にむけて情報提供をしています。高校は県内が中心になりますが、大学については就職につながりやすくなる地元出身者がいる県外の大学を訪問し、今後の就職の意向を伺ったりしています。

Q2.これまで活動してきての手応えと課題を教えてください

IT WORKS@島根を通じて行っているマッチングサービスや転職イベントなどを通じて、県内のIT企業への就職者が増えていることに手応えを感じています。それは、単に人数が増えたということだけではなく、より良いマッチングになるために必要な情報をしっかり提供できていると実感できている点です。
求職者が実際に就職を決めるには、単にスキルだけでなく、希望する企業の雰囲気など”肌感”が伝わることが重要だと思います。UIターン希望者の方は、ほとんどが進学時に県外へ出ていることが多く、「今の島根県」が全くわからないという声を良く聞きます。地元の人であればすぐ分かる企業名を出しても「知らないですね。」と言われるくらいですから(笑)。
もちろん、企業にとっても、持っているスキルだけで判断する訳ではなくて求めている人物像に近いかどうかが重要です。こうしたことを踏まえ、しっかりと地元に根ざして活動できていることで企業と求職者双方に必要な情報を提供でき、それが結果に結びついていると考えています。

課題としては、現在の県内IT企業からの求人数に応えていくために、現在のIT WORKS@島根の登録者数をさらに増やす必要があるということです。現在、IT WORKS@島根に登録している人は半分以上が島根県の出身者など縁のある人ですが、島根県に縁がない方にも島根県での就職を検討していただくため、IT WORKS@島根の認知度を上げ、登録者数を増やしていく必要があると思っています。このことについては、島根県の担当者、IT人材コーディネーター、巡回相談員と連携して、いろいろな方策を試していければ良いなと思っています。

Q3.今後の活動は?

まずは、県内のIT企業の話をしっかり聞き、確度の高い情報を収集して、求職者に届くようにいろいろと試行錯誤しながら発信を続けていくことだと思います。確度の高い情報を発信できることで県内IT企業の魅力を求職者に伝えることができますし、IT人材コーディネーターが実施しているマッチングの質も上がっていくと思いますので。

このようにIT人材コーディネーターによるマッチングと私たち巡回相談員の確度の高い情報収集・提供サービスは、他の都道府県にはないものだと思います。エンジニアにとっても、企業の皆さんにとってもこれだけ手厚い支援はなかなか無いと思いますので、是非、皆さんに利用していただきたいです。

        

最後に

(島根県・植田さん)
これまで2年取り組んできて、20名という当初の目標をクリアしましたが、人材確保の取り組みは引き続き必要だと考えています。“IT WORKS@島根の登録者を増やす”より確度の高い情報を提供する”ため、引き続き県内IT企業の皆様をはじめ関係の方々と連携し、この取り組みがより良いものとなるよう、チャレンジしていきたいと思います。